<中等度の運動を毎日続けると効果が大>

神戸市長田区の永田診療所が運動療法に関するヒントをまとめました。


糖尿病運動療法のいろは

運動療法は、食事療法とならび糖尿病の基礎的治療法の柱です。しかし、いざ運動療法を始めようと思っても、何をどうしてよいのか迷う人が多いのではないでしょうか。「運動療法」などといっても何もおおげさに考える心要はありません。要は、毎日の生活のなかに病状に合った、長続きのする運動を組み入れていくことです。以下に、あなたに必要な運動を考えるためのヒントやそれを毎日続けるための工夫などについてまとめました。

1.運動療法を始めるに当たって・・・

運動をすることによってかえって病状が悪化したり危険な状態を招く場合があります。医師の定期的な診察、指導により行なうことが大切です。
運動をひかえたほうがよい場合としては、
①血糖のコントロールが不良な場合(ことにケトーシスを起こしている場合)
②重篤な網膜症、腎症や心臓血管障害を合併している場合
③急性肺炎などの感染症を併発している場合
などが考えられます。

2.中等度の運動を毎日続けるのがよい

エネルギー消費の面からみると、強い運動を短時間行なうのと、軽い運動を長くやるのとで、ほぼ同じ効果が得られるはずであり、個人の体力、病状、好みに合わせて長続きしそうなものを選べばよいわけですが、糖尿病の場合、病状や合併症の状態が千差万別であるので、これら全般への配慮を考えると、軽度ないし中等度の運動を1日最低10分以上(できれば朝夕で合計30分ぐらい)毎日続けてほしいと思います。
代謝面での改善には、強い運動を短時間行なうよりも中等度の運動を一定時間続けるほうが有効であるとのデータも発表されていますので、カロリー消費だけでなく代謝の改善にも役立ちます。また、このような効果は、動かした筋肉だけに認められますので、できるだけ全身の筋肉を使うような運動(全身運動)を選ぶようにします。

3.具体的にどうする?

右図を参考にして、散歩、ジョギングなどの全身的な動的運動とストレッチ体操(筋力強化体操)やブルワーカーなどを用いた筋力、筋持久力をつける静的運動、それに準備運動や整理運動を自分の好みや体力に合わせて適宜組み合わせて行なうようにします。いつも決めていた運動が雨などのためできないときは、同等の室内運動に交換するようにして続けます。運動量は、全身的動的運動で160kcal(2単位)、静的運動に準備、整理運動を加えて80kcal(1単位)、合計1日240kca1消費を目標とします。
なお、運動の強さには個人差があります。運動の強さを判断する方法としては、運動中断直後の脈拍を測る方法が簡単で便利です。10秒間の脈拍を数えて6倍すればおよその脈拍数がでますが、40~50歳代の人では、毎分100~120前後であれば、中等度の運動であるといえます。若い人では、110~140、逆に60~70歳代の人では、95~115ぐらいが中等度の運動の目安です。

4.実施上の注意点は?

軽い準備運動(5分間ぐらい)から始めて、また、軽い整理運動(クーリングダウン)で終わるようにします。中等度の運動から急に運動をやめると心臓に負担をかけることになります。
一例としてラジオ体操や歩行などの軽いものからジョギングに移り、再び体操や歩行で終わるようにするプログラムが考えられます。
運動を行なう時期として、食後1~2時間後が適しています。サラリーマンなどで運動のために特別な時間がとれない人は、通勤の際、足で歩く区間を多く設けたり、エレベーターやエスカレーターを使わず階段を昇降することなど、生活のなかに規定の運動をくみこんでしまうのも一つの方法です。また。万歩計をいつも身につけることをおすすめします。歩行量が数値で記録されるので、実績の確認のために便利です。毎日の歩数を日記帳や家計簿のスミに記録して励みとすることができます。1日1万歩(最低7,000歩)が目標です。